「あぁ、おいしかった」

普段何気なく使っている言葉だけれど、今と昔とで、自分の中にあるその言葉の持つ意味が拡がってきているように感じます。昔は、それこそ20代の頃までは、「おいしい」と言えば「味」のこと。優れた食材、人気店の料理、大好きなスナック菓子。「おいしい」は口の中にあるものでした。今の自分にとって「おいしい」とはどんな言葉だろう。ふと立ち止まって考えてみると、さまざまな気持ちが自分の中に沸き上がってくることに気が付きます。「うれしい」「たのしい」「ありがとう」「ワクワク」…。もはや「口の中」に収まらず、「頭」や「心」の中にまで、「おいしい」の居場所があるような感覚。ポツポツと沸いてくる感情の根っこにあるものについて、もう少し思考を巡らせてみようと思います。「おいしい」ってなんだろう?

 

 

自己紹介が遅れました。SUNNYSIDE FIELDSの秋吉です。フィールズ開業時から、企画を企てたり、想いを写真や文章で皆さんに届けたりする担当をしています。このショップブログでも、少しでも多くの人に、日頃僕らが考えていることなどをお伝えできればと思い、つらつらと書かせていただきます。どうぞよろしくお願いします。


さて、「おいしい」に話を戻しましょう。SUNNYSIDE FIELDSは「おいしい毎日を」という言葉を大切に、日々営んでいます。あえて「おいしい」を「美味しい」にしなかったのは、冒頭にもお話した「味」以外の「感情」を大切にしたかったからです。SUNNYSIDE FIELDSでは、毎日丁寧なものづくりを行なっています。地元の有機農家さんから仕入れたお野菜を使ってお弁当を作ったり、自分たちで仕入れ&焙煎した豆を使ってチョコレートを作ったり、コーヒーを淹れたり。自分たちで自分たちの使う野菜を育てていたりもします。効率だけを考えたら、かなり気の遠くなるようなやり方かもしれません。ですが、こうした取り組みは、僕らが考える「おいしい」を体現するためには必要だと考えているんです。

 

 

そうした丁寧なものづくりが大切だなぁと感じるようになったきっかけは、数年前、知り合いの農家さんからお野菜をいただいた時でした。当時は「有機」って言葉の意味もよく分からないくらい、食べるものには無頓着。「おいしい」は「美味しい」でしかなかったころ。いつもの食卓に並んだ野菜たちを食べたときに心から感動したのです。食べた瞬間に農家さんの顔が浮かび、こだわりを思い出し、気持ちが高揚するのを感じました。味だけでなく、その背景にある様々なものに想いを巡らせる事ができたのだと思います。「うれしい」「たのしい」「ありがとう」…様々な感情と共に楽しむことができた、それはそれは豊かで、とっても「おいしい」食事でした。

 


私たちはこうした「おいしい」をお届けしたいと考えています。誰が作ったものなのか、どうやって作っているのか、どんな想いで作っているのか。モノの背景にあるヒトやコトも併せてお伝えして、様々な「おいしい」を体感してもらいたい。だから、チョコレート工場はガラス張り、キッチンはオープンキッチン。つくる人も食べる人も、お互いを見ることができて、それぞれに想いを馳せることが出来る。それが僕らの考える「おいしい」のきっかけになるのではと考えているんです。

 

 

ここまでつらつらと「おいしいってなんだろう」ということについて書かせていただきましたが、僕らもはっきりとその輪郭を描けているわけではありません。むしろあまり定義づける必要もないかもなぁとすら考えています。毎日、仲間と丁寧にものづくりをし、訪れたみなさんと丁寧に対話する。その中でそれぞれが感じる「おいしい」が、それぞれの正解で良いのかもなぁと。それが「おいしい毎日を」を体現する唯一の方法なのかなぁと考えています。たぶん、僕らは「おいしいってなんだろう」という問いについて、この先ずっと考え続けるのだと思います。そして、その答えめいたものは、きっとみなさんと僕たちの間にあるような気がしています。だからこそ、みなさんと一緒に探求し続けたいです。この場所で。「おいしいってなんだろう」。

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